004 切削:エンドミルの種類と特徴

切削加工による精密部品の加工は、エンドミルと呼ばれる回転工具が用いられます。エンドミルの種類と特徴についてご紹介します。

1. エンドミルの種類

切削加工はエンドミルと呼ばれる刃物を回転させ、材料を削る加工方法です。
このエンドミルは様々な種類とサイズがあり、形状や材質に応じて使い分けられます。

エンドミルを大別すると、形状加工用のエンドミルと、穴加工用のエンドミルに分かれます。
特殊なエンドミルも数多くありますが、一般的にどのようなエンドミルがよく使われるのかをご紹介しましょう。

2. 形状加工用のエンドミル

形状加工用のエンドミルは、スクエアエンドミルやボールエンドミルなどがあります。
切削加工では、大まかに体積を削る粗加工と、表面を精度よく仕上げる仕上加工に分かれます。

同じ形状のエンドミルでも、粗加工用と仕上加工用で2本利用する事もあります。

以下では一般的なエンドミルの種類と、使われるシチュエーションについてご紹介します。

スクエアエンドミル 外観
スクエアエンドミル 外観
スクエアエンドミル 先端
スクエアエンドミル 先端

スクエアエンドミル

形状加工用の一般的なエンドミルです。
フラットエンドミルとも呼ばれ、平面や側面の加工に適しています。
荒加工用にも使用されます 。
先端が角になっているので、溝断面の隅がピン角となる矩形の溝ができます。

ラフィングエンドミル 外観
ラフィングエンドミル 外観
ラフィングエンドミル 先端
ラフィングエンドミル 先端

ラフィングエンドミル

角にアールの付いたエンドミルです。
厳しい加工条件でも先端が欠けにくいため、主に重切削での粗加工に使用されます。
体積を効率よく削り取るのに適したエンドミルと言えます。

ボールエンドミル 外観
ボールエンドミル 外観
ボールエンドミル 先端
ボールエンドミル 先端

ボールエンドミル

先端が半球状のエンドミルです。
傾斜面や自由曲面などの3次元形状を削る際に利用されます。

滑らかな曲面などの3次元形状を削る際に用いられます。

Tスロットカッター 外観
Tスロットカッター 外観
Tスロットカッター 先端
Tスロットカッター 先端

Tスロットカッター

先端がT型になっていて、横方向に刃がついています。
T字の横溝を削るときなどに利用されます。

主にOリング溝など、加工面から見てアンダーカットとなる部分の切削に用いられます。

2. 穴加工用のエンドミル

切削加工による一般的な穴加工は、センタードリルで案内となる微小な穴をあけ、ドリルで下穴をあけるところまでは共通です。
そのままキリ穴として利用する場合もありますし、タップ加工で雌ネジを切ればネジ穴、リーマで精度よく仕上げれば公差穴、ザグリカッターで段付きのザグリ穴を形成するなどのバリエーションがあります。

そのバリエーションごとに、専用のエンドミルを使い分ける事になります。

センタードリル 外観
センタードリル 外観
センタードリル 先端
センタードリル 先端

センタードリル

ドリル加工の前に案内用の窪みを精度よく開けるための専用の小型ドリルです。
「ポンチ」のような役割で、ドリルの食いつきを良くし、位置精度を高めます。

ドリル 外観
ドリル 外観
ドリル 先端
ドリル 先端

ドリル

汎用的な穴あけ加工用の刃物です。
いわゆる「キリ穴」を開けます。
タップやリーマ加工用の下穴加工にも使われます。
一般的には、下穴用に開けた穴のドリル先端形状(多くは118°)が穴底に残ります。

タップ 外観
タップ 外観
タップ 先端
タップ 先端

タップ

決まった規格のネジ穴を開けるための刃物です。
ドリルで下穴を開けた後に使用します。

スパイラルタップ、ポイントタップ、ロールタップなど、深さや形状、加工方法に合わせた様々な種類があります。

リーマ 外観
リーマ 外観
リーマ 先端
リーマ 先端

リーマ

高精度な穴である「リーマ穴」をあけるための刃物です。
ドリルで下穴を開けた後に使用します。

ザグリカッター 外観
ザグリカッター 外観
ザグリカッター 先端
ザグリカッター 先端

ザグリカッター

「ザグリ穴」のザグリ形状を形成するための刃物です。

「沈めフライス」とも呼ばれ、案内用の突起が付いています。
ドリルで穴を開けた後に使用します。

3. エンドミル選定の実際

エンドミルは今回ご紹介した種類以外にも多くの種類があります。
更に、刃の長さや刃の枚数、材質・コーティング、直径などを組み合わせると、無数のバリエーションがあります。

製造現場では、図面指示の形状を実現するために、最適なエンドミルを選定して加工に用います。
加工する材質や形状、加工する主軸の回転数や送り速度、切込み深さなどによって詳細なエンドミルの仕様が決定されます。

多くの製造業者では、はん用的なエンドミルを在庫して使っているのが一般的です。

在庫のエンドミルで対応できない場合は、その都度エンドミルメーカーから必要な規格のエンドミルを調達します。
この場合は、工期が長くなったり、エンドミル購入費用が追加となったりします。

更に、特殊なエンドミルが必要な場合は、その都度オーダーメイドでエンドミルメーカーに特注する事になります。

設計の際には、可能な限り汎用的なエンドミルで製作できるように設計するとコストダウン、工期短縮となるばかりか、品質の安定にも繋がります。

使用するエンドミルを意識した設計を心掛けると、製造現場からも喜ばれ合理的な設計となります。

設計に困ったら是非製造現場にも意見を聞いてみてください。

当社でも製造現場からの目線で設計段階からのアドバイスをさせていただいておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

機械部品の設計や製作に関するお問い合わせは、お気軽に下記お問い合わせ先よりご連絡ください。

小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

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