012 切削:3次元加工とは何だろう?

切削加工は直線や穴などの2次元的な形状だけでなく、球体や曲面など3次元的な形状も実現可能です。切削加工における3次元加工についてご紹介します。

切削:3次元加工とは

1. 3次元加工とは

今回はマシニングセンタなどの切削加工の醍醐味とも言える3次元加工についてご紹介します。

3次元加工とはいったい何でしょうか?
切削加工における次元というのは、同時に動く軸方向の数だと考えていただければイメージしやすいと思います。

1次元加工と言えば、1軸方向、つまり穴あけや直線状の溝加工などが該当します。

2次元加工は、X、Y平面を自在に動き回る加工です。
例えば、曲線なども含めて輪郭を切り抜くような加工などです。
X方向、Y方向を連動して動かす事で、直線だけでなく、斜めの直線や、円弧・曲面なども加工できます。

そして、3次元加工はそれにZ方向も加えて、3軸全てを同期して自在に加工する事を示します。
これにより、曲面形状を加工でき、立体的な3次元形状を実現できる事になります。

2. 一般的な2次元加工例

まずは、切削加工で実現できる典型的な2次元加工の例をご紹介しましょう。

ハウジング
ハウジング
ブラケット
ブラケット

上図のような形状は、典型的な2次元加工部品です。
2次元加工というのは、高さ方向の変化を伴わないという事です。
つまり、上から見ると全ての加工形状が同じ高さで、加工面に対して垂直にできている形状です。

左側のハウジングも、いかにも立体的ではありますが、区分でいえば2次元加工部品です。
様々な面に加工が施されていますが、段取替えをしながら加工面への加工を1~2次元的に加えていく事になります。

Oリング溝も曲線が含まれますが、溝の深さは一定です。
このような形状はNCプログラムの作成も難しくはありません。

右側のブラケットも同様です。
R形状の輪郭やポケット形状がありますが、いずれも底面高さは一定ですので2次元加工となります。

3. 3次元加工の典型例

それではどのような形状が3次元加工が必要なものなのでしょうか?
具体例を少しご紹介しましょう。

治具部品
治具部品
航空機部品
航空機部品

左側の例は、樹脂の成型品を受けるための治具部品です。
成型品の自由曲面を転写したような受け形状を持っています。
当然高さ方向に3次元的に変化する曲面ですので、通常の2次元的な加工では実現できません。

右側の例は、典型的な航空機部品をイメージした形状です。
肉抜きのために斜面や自由曲面が多用され、斜め穴なども多いですね。

これらのような曲面形状を持つ切削加工部品は、特定の分野で多用されます。
金型部品などもまさに3次元加工部品と言えますね。

これらの3次元加工を実現するためには、X、Y、Z軸を自在に動かせるようなNCプログラムを作成する必要があります。
職人が手で入力して作れるような単純なものではなく、専用の3次元加工に対応したCAMアプリケーションが必要となります。

3. こんな3次元加工も!

もう少し込み入った3次元形状もご紹介しましょう。

インペラ
インペラ
レリーフ
レリーフ

左側のインペラは、典型的な3次元加工部品です。
ねじれた自由曲面の羽形状が無数に並んでいて、互いに重なり合っています。

このような形状は、通常の3次元加工でも実現は難しく、同時5軸加工と呼ばれるX、Y、Zの3軸と、A、Cの回転2軸を同期してダイナミックに動かす加工が必要となります。
当然同時5軸加工が実施できる5軸加工機や、複雑なNCプログラムを作成できるCAMアプリケーションが必要になります。
一般的な3軸加工機による3次元加工よりも更に高度な加工方法です。

右側のレリーフは、人の顔をスキャンして作成したものですが、このような自由曲面のみで構成された形状も加工できます。
機械部品だけでなく、装飾品やアートなど3次元加工が活躍できる領域も多岐にわたりますね。

是非このような加工も実現可能だという事を踏まえて、設計の幅を広げていただければ幸いです。

4. 3次元加工の実際

今回は切削加工の特徴でもある3次元加工についてご紹介しました。

3次元加工は立体的な形状を実現できる強力な加工方法です。

基本的には3次元的な曲面形状を加工する事となります。

3次元加工に用いられるのは、ボールエンドミルと呼ばれる先端が半球状のエンドミルです。
表面を細かくなぞる様にボールエンドミルを動かす事で、3次元形状を実現します。

当然ですが、その分加工時間は膨大にかかる事になります。

出来る限り3次元形状を避けるのが、コストダウン、工程短縮のための合理的な設計となります。

必要な場合にのみ3次元形状を用いるように心がけると良いと思います。

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小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

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