015 切削:設計による変形の回避例

薄モノ形状で設計によって加工による変形を抑えるポイントをご紹介します。

設計:変形回避の設計

1. 薄モノ形状の変形とは

以前もご説明した通り、切削加工においては、体積を除去するという特性上特に薄モノで変形が生じやすい事を解説しました。
物理的に変形が生じますので、製造現場での反り取りや矯正で出せる精度にも限度があります。
設計側で変形の生じにくい形状などに変更する事も是非ご検討いただければと思います。

今回は、変形の生じやすい薄モノ部品での、設計変更例をご紹介します。

アーム 設計イメージ
アーム 設計イメージ
アーム 変形
アーム 加工による変形

上図はロボットによる移送などに用いられるアーム部品の例です。
理想は左側のように平坦な仕上がりですが、現実的には応力の作用によって右側のように変形を生じてしまいます。

この変形をなるべく出さないように、設計側でできる工夫は主に次のようなものです。

  1. 高さをできるだけ低くして削り量を減らす
  2. 底面の厚さをできる限り厚くする
  3. 裏側に補強を追加する

2. 削り量を減らす

削る量が多くなればなるほど変形は大きくなる傾向になります。

今回のような例では、掘り込み部分の壁面高さを低くするなど工夫の余地があれば、できる限り低くすると変形を抑えることができるはずです。

壁面高さの変更
壁面高さの変更

上図のように壁面高さを低くすると、結果的に切削加工で除去する量(ピンク色の部分)が減りますね。
それだけ変形量も減ることになります。

設計上許容できる範囲で、このような掘り込み深さを低くすると良いでしょう。

3. できるだけ厚くする

壁面の高さを変えられない場合、次に考えられる工夫は底面の厚みを厚くすることです。
同じ除去量でも、削られずに残る部分の厚みがあるほど変形量も小さくなりますね。

肉厚の変更
肉厚の変更

上図のように、肉厚をできる限り厚くすると変形も小さくて済みます。
ただし、その分材料は大きくなりますし、部品の重量も増えることになります。

トレードオフで考える際の一つの方向性として考えていただければよいと思います。

4. 補強を追加する

掘り込み部の形状や板厚に制約があって変更できない場合、許容可能であれば補強となる形状を追加する事もご検討ください。

補強の追加例
補強の追加例

例えば今回のような形状では、裏側に長手方向の補強を入れるとずいぶんと変形は抑制されるかもしれません。
もちろん、不用意に形状を追加する事で、変形が思わぬ方に生じる可能性もあるので注意が必要ですね。

材料は一回り大きくなりますし、加工工数も重量も増加しますので、そのメリット、デメリットをよく考えたうえで判断する必要があります。

5. 薄モノ形状を設計する際のポイント

今回は、製造現場から見た薄モノ部品の設計のポイントをご紹介しました。

切削加工での製作では、除去加工という特性上どうしても反りや変形が生じやすくなります。

できるだけ削り量を減らす、形状を厚くする、補強を付けるなどの工夫でその程度を減らす事は可能です。

製造現場での工夫と、設計サイドの工夫を合わせてより合理的な部品を実現できると良いですね。

当社では設計段階から製造側の事情を汲んだご提案が可能ですので、出図前に是非ご相談いただければ幸いです。

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小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

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