009 切削:加工面と段取替え
切削加工において、精度を高める要の作業とも言える段取替えについてご紹介します。

1. 加工面って何だろう?
フライス系の切削加工では、エンドミル(主軸)の方向に対して正対する面に加工を施します。
主軸と正対し、加工が施される面を加工面と呼びます。
切削加工では、この加工面に対して輪郭を削る、ポケットを掘る、段差を削る、穴を開けるなどいろいろな除去加工を施すことができます。
今回は、この加工面と段取替えとの関係を解説します。

上図のようなブロックを想定してみましょう。
切削加工部品はこのようなブロック状の6面体が基本となります。
このブロックは正6面体の表示されている3面にそれぞれ加工が施されています。
面1には溝とネジ穴が4か所、面2にはリーマ穴とネジ穴が2か所、面3にはポケット形状です。
(表示されていない面には加工が施されていないとします。)
2. 段取作業と面1の加工
まずはこのブロックの面1を加工すると想定しましょう。

まず面1が加工面として上向きになるように素材をテーブル面に固定します。
その後、平行出しや原点入力、工具の取り付け・測長、プログラムの作成などの加工の準備作業を行います。
実際に素材を削る加工を施す前までの準備作業を段取作業と呼びます。
段取作業はまた別の回で詳しく解説します。
段取作業が終わり、加工前まで完了した状態を表したのが上図左です。
続いて、面1の加工を行います。
フラットエンドミルで溝の加工を行い、ドリルでネジ穴の下穴を開けて、タップでネジ穴を開けていきます。
これらの加工はNCプログラムに従って、工具交換しながら自動で機械が動きます。
(ATC機能の付いたマシニングセンタを想定したフローを解説しています。)
次に面2を加工したいわけですが、このままでは加工できませんね。
主軸から見て、面2になる個所は加工のできないアンダーカットとなります。
面2を加工するためには、一度固定を解いて素材をひっくり返し、再度段取作業をすることになります。
このような段取りを解いて、再度新しい加工状態で段取作業をやりなおす事を段取替えと呼びます。
3. 段取替えと面2の加工
下図のように面2を上に向けて、加工を施します。

面2を上に向けた状態で、再度固定して段取作業を行い、工具をセットして加工を施します。
既に段取された状態を一度解いて、材料をひっくり返して、再度段取作業を行う事になります。
このように、段取状態を変更する事を段取替えと呼びます
4. 再度の段取替え
面2の加工が終われば、更に段取替えをして面3の加工を進めます。

上図は面3の加工が完了した状態を表します。
ここまで進めて、やっと製品が完了したことになるわけですね。
加工面が3つありますので、3回段取作業を行う必要があるわけです。
つまり、今回のブロックの加工は次のような順番で工程が進むことになります。
①面1の段取作業
↓
②面1の加工
↓
③面2の段取作業(段取替え)
↓
④面2の加工
↓
⑤面3の段取作業(段取替え)
↓
⑥面3の加工
ちょうど加工面の数だけ段取作業が発生する事になりますね。
5. 段取替えの実際
フライス系の切削加工では、加工面が上に向くように段取替えをしながら、1面ずつ加工を施していく事になります。
当然加工面が増えれば増えるほど、段取替えの回数が増えます。
段取替えには作業者によるアナログ的な作業が多く含まれます。
段取替えが増えるほど加工工数が増え加工費は増大しますし、加工精度が悪化する要因にもなります。
段取作業の具体的な内容については、こちらの記事でご紹介していますので是非ご一読ください。

逆に、段取替えが減ればその分コストダウンにもつながりますね。
アールの大きさや向きを揃える、穴の規格を統一するなどの工夫をすると、その分段取工数は減ることになります。
また、5軸加工を利用する事で、段取替えを省略できる可能性があります。
5軸加工については以下の記事で解説していますので、是非ご参照ください。

段取替えを省略できるように、出来るだけ加工面を少なくする、隅アールの向きを統一するなど設計側として配慮するとコストダウンや工程短縮に繋がります。
当社では段取替えなど、製造の実情を踏まえて設計内容に関するアドバイスも行っております。
設計内容でお困りのことがあれば、是非遠慮なくお問い合わせ下さい。
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株式会社小川製作所
取締役 小川真由
< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。
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