055 調達:受託製造業って何?

製造業における重要な存在である受託製造業についてご紹介します。

受託製造業

1. 受託製造業とは

この記事では、製造業の中でも重要なプレーヤーの1つである受託製造業の仕事についてご紹介します。

製品・部品の製造や、その製造工程の一部を受託する業態を受託製造業と呼びます。
製造工程のうち加工のみを請け負う場合は、受託加工業などとも呼ばれます。

中小製造業の多くがこのような業態を取っていて、特に規模が小さいと町工場などとも呼ばれますね。

受託製造業は一般的には下請けと呼ばれる存在で、主に顧客となるメーカーから、製造・加工のみを受託する事になります。

メーカーから直接受託する場合を1次請け(1次サプライヤー、Tier 1など)と呼び、そこから更に外注していくと2次請け、3次請け、n次請けといった形で下請け構造が連なる場合もあります。

今後下請法の変更に伴い、下請けという名称も製造委託と言われることになるようです。

多くの受託製造業は、自社の得意な製品や工程に特化しています。

金属加工で言えば、機械加工業者、製缶加工業者、溶接加工業者、板金加工業者、メッキ加工業者、塗装業者、熱処理業者などです。

更に、これらの専門業者による工程を取りまとめて、顧客との接点となるハブ企業も存在します。

ハブ企業は商社が担う場合もありますが、協力工場とのネットワークを活用して取りまとめるのが得意な受託製造業が担う場合も多いです。

2. 受託製造業の位置付け

製造業における受託製造業とメーカーとの関係を整理してみましょう。

受託製造業の位置付け
受託製造業の位置付け

上図はかなり簡略化した表現としていますが、メーカーと受託製造業の位置付けをまとめたものです。

メーカーが特化した分野・商品に対してマーケティング・企画、設計・開発、製造・品質保証、販売・アフターサービスまでを提供するのに対して、受託製造業は自社の受託する範囲に特化し、多くの場合は幅広い顧客に向けて仕事を請け負います。

プロダクト(メーカー)とプロセス(受託製造業)で、マトリクス状に役割を分担していると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

複数の工程を取りまとめて部品を供給する部品メーカーとしての位置づけもあります。

メーカーは基本的には組立など製造工程を持っていますが、外注工程(受託製造業)を組み合わせる事が多いと思います。
自社で製造工程(工場)を持たないメーカーをファブレスメーカーなどとも呼びますね。

このようにメーカーと受託製造業が縦糸と横糸のように織り合う事で、製造業全体が構成されている事になります。

3. 受託製造業の仕事の流れ

受託製造業の典型的な仕事の流れを見てみましょう。

受託製造業のイメージ

受託製造業のイメージ

受託製造業は、「受託」と表現される通り、顧客の要求に基づいて製造・加工のみを受託する事がほとんどです。

顧客から提示される図面や仕様書通りの製造や加工を請け負う事で対価を得る仕事と言えます。

基本的には設計はメーカーが行う前提ではありますが、場合によっては受託製造業側で設計を行ったり、設計の支援をしたりもします。

当社も、製造現場目線から顧客のエンジニア向けに設計支援を行い、双方にとってより合理的な設計内容・製造方法などをご提案しています。

基本的な受託製造業の業務フローは次のようになります。

①顧客から完成品の図面や仕様書を受け取り、注文をもらう(多くの場合事前に見積もりをする)
②仕入先に部品や外注加工を注文し手配する
③仕入先からの部品などを仕入れる
④加工・製造を行い、製品・部品として仕上げる
⑤出来上がった製品・部品を顧客に納入する
⑥顧客から対価(代金)を受け取る(売上高)
⑦仕入先に仕入費用を支払う

顧客から受け取る売上高から、仕入先に材料費や消耗品、外注加工費などの仕入費用を支払って、手元に残るのが付加価値(≒粗利)という事になります。

この付加価値には、主な仕事と言える製造・加工などの製造業務の他、営業や技術研究・開発、受注・調達業務、経理業務、梱包や納品なども含まれます。

4. 受託製造業のメリット・デメリット

受託製造業は、自社の得意な製造・加工に特化し、複数の業界や顧客にそのサービスを提供します。
そのメリット・デメリットについてご紹介します。

<メリット>
・自社の得意な工程に特化しているため、専門性が高い仕事を提供できる
・複数の業界・顧客との取引きが可能なため、リスク分散をしやすい
・最小限の設備・人員のみでシンプルな事業運営ができる
・一般には規模が小さいため意思決定・伝達が早く、スピーディーな対応がしやすい
・仕事の見える化がしやすく、細かい情報取得、管理がしやすい
・製品開発や広告・販売などの費用やリスクを負わなくて良い

<デメリット>
・自社で品質や生産・受注数量をコントロールできない
・必ずしも安定した受注があるわけではない(経営が安定しにくい)
・先に設備や技術・人材に投資しなければいけない
・競合が多く、価格競争に陥りがち
・一般には規模が小さく、経営基盤が弱い
・特に若手の職人確保が難しい場合が多く、事業の継続性に課題
・仕事が属人化しやすく、技術伝承が難しい仕事が多い

5. 受託製造業の特徴

今回は、製造業の中でも重要なプレーヤーと言える受託製造業についてご紹介しました。

受託製造業は、得意な技術に特化している場合が多く、1社でできる事は限られていますが、全体として多様性を供給する重要な存在でもあります。

バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍などを超えて、現在も特徴的な受託製造業者が数多く存在します。

とはいえ、日本の受託製造業は経営者の高齢化も進み、近年では急激に減少しています。

少しずつ世代交代により事業承継を果たし、数十年先を見越して事業転換を進める受託製造業者が増えていますがまだ少数です。

メーカー側からすると、今まで外注していた仕事が、下請け事業者の廃業などで突然製作できなくなる事が増えているそうです。

その際に転注しようとしても、同じ品質・コストではなかなか引き受けてくれる事業者が見つからないという事案が増えています。

このような時には、多くの中小製造業とパートナーシップを結び、メーカー側の事情にも精通したハブ企業を見つけることが肝要となります。

ハブ企業は、製造工程だけでなく、時には設計や事業計画等についても相談できる心強いパートナーです。

近年では、設計・調達と製造現場の距離が離れがちと言われますが、受託製造業者はその溝を埋めるパートナーとしての役割も増えてきています。

受託製造業者で培ってきた様々な加工技術や知見・ノウハウをメーカーサイドで活用し、お互いに取ってメリットのある合理的な設計と取引関係へと繋げられると良いのではないでしょうか。

機械部品の設計や製作に関するお問い合わせは、お気軽に下記お問い合わせ先よりご連絡ください。

小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

<主なWEBメディア掲載実績>
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note: 日本の経済統計と転換点

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