054 製缶:二次加工によるビビりとは?

製缶部品の二次加工で問題になりやすいビビりの発生についてご紹介します。

1. 二次加工で生じるビビりとは

製缶加工は溶接で部材を組み上げ、フレーム構造などを製作する加工です。

加工精度が必要な場合は、溶接で組み上げた後に機械加工による二次加工を施します。

架台などでは、上下を削って、穴加工を開けるような二次加工が多いですね。

今回はこの二次加工の際にトラブルになりやすい設計れについてご紹介します。

典型的なのは、二次加工を施す面の剛性が低く、二次加工時に加工現場でビビりが生じてしまい、最悪の場合加工不可となるケースです。

具体的な形状でイメージしてみましょう。

二次加工面の剛性が低い例
二次加工面の剛性が低い例1

例えば精密機械の架台などで、上記のような上下面を二次加工する製缶部品を想像してみましょう。

表面には二次加工を施す面の広いプレートがあります。
製缶加工の時点では仕上がりよりも少し厚めのプレートを貼っておき、二次加工で裏面、表面と面削します。

 二次加工時のビビりの発生

このような面の広い部分に対して面全体を削る加工(面削)は、主に正面フライス(フェースミル)と呼ばれる径の大きな刃物が用いられます。

正面フライスは一回に削り取れる面積が広く、効率的な面作が可能です。

二次加工面の裏側に補強がない場合、面削時に面が大きく振動して切削面が荒れる場合があります。

回転工具によって振動が励起され、ビビりと呼ばれる肌荒れのような切削面ができるわけです。

場合によっては過剰に面が暴れて、加工面が大きくえぐれたり、回転工具が折損する可能性もあります。

このような時は、加工現場から製作NGと言われる事にもなります。

ビビりが発生する原因は、加工面の剛性が低く、振動が大きくなってしまうためです。

以下のような場合にビビりが発生しやすいです。

・加工面の裏側に補強が無い
・加工面自体が薄い
・加工の深さが深い
・加工条件が合っていない

もちろん加工現場でビビりを抑える工夫も可能ですが、設計側で変更した方がより合理的なケースも多いです。

今回の場合、次のような変更を検討してみてください。

二次加工時のトラブル 補強例
設計変更例

上図は裏側の二次加工面に対して、十字の補強となる角パイプを追加した例です。

もちろん、表側のプレートとこの補強用の角パイプも溶接で接合します。

このような変更とすることで、二次加工時のビビりをかなり抑え、精度の良い加工品を製作する事ができます。

加工がしやすいばかりでなく、製品全体の剛性も上がります。

もちろん、このような補強を追加する事で、重量が嵩み、材料費・製缶加工費も増えることになります。

場合によっては、角パイプではなく、アングルやフラットバーの簡単な補強だけでも良いかもしれません。

2. 典型的な二次加工時のビビり例

もう1例、二次加工時のビビりが生じやすいパターンをご紹介します。

二次加工面の剛性が低い例2
二次加工面の剛性が低い例2

上図は、角パイプで組み上げたフレームの上下に、二次加工を施すプレートを配置した例です。

二次加工時に、まず裏面のプレートを削って底面を作り、ひっくり返して表面のプレートを削るイメージですね。

表面のプレートの裏側には角パイプが配置されているので、一見すると何の問題もなく二次加工ができそうです。

二次加工時のトラブル
二次加工時のトラブル

加工時の状況を横から見てみると、上面側のプレートは長い角パイプの中央付近に配置されていて剛性が低い状態にある事がわかります。

このような場合は、やはり二次加工時に上面側の角パイプごと振動が生じ、加工面にビビりが発生してしまう事になります。

角パイプが細く長いほど、削り量が多いほどビビりの程度は大きくなりますね。

場合によっては加工現場から加工を拒否されることもあり得ます。

このような場合は、製造現場で二次加工面の裏側にジャッキなどで支えを入れて補強し、ビビりを抑えるなどの工夫もします。

ただし、やはり設計側で加工に配慮した設計を行う方が、より本質的な解決と言えそうです。

製缶フレーム 補強案
補強案

今回の場合だと、宙に浮いたようになってしまう表側の二次加工面の裏に、補強を入れると良いでしょう。

製品全体としての剛性も大きく向上します。

また、出来れば裏側の底面にも補強プレートを追加すると、更に良いと思います。

製品の設計上不要だけれど加工上必要な形状を付加する事によって、より合理的な設計となる場合があります。

製缶品で二次加工を想定する場合は、特に二次加工時の剛性に配慮した設計を心掛けると良いと思います。

不明な点があれば、是非製造現場と相談してみてください。

機械部品の設計や製作に関するお問い合わせは、お気軽に下記お問い合わせ先よりご連絡ください。

小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

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