056 調達:製造ハブって何?
製造業において重要な役割を果たす製造ハブとハブ企業についてご紹介します。
1. 製造ハブとは
機械・装置などの部品製作・加工を外注する際に、重要な役割を果たすハブ企業についてご紹介します。
製造業において、部品の製造・加工は受託製造業に外注する場合が多くあります。
特にメーカーは組立や品質保証に注力する事が多く、部品製作は外注化するケースが多いのではないでしょうか。
受注する側の多くの受託製造業者では、自社の得意な分野や工程に特化しています。
調達するメーカー側からすると、どの部品をどの受託製造業者に外注すれば良いか見えにくいというのが実態だと思います。
特に近年では、高齢経営者のリタイアに伴う廃業が相次ぎ、受託製造業者側も大きく変化しています。
また、多品種少量の部品製作が必要な時に、1点1点マッチした受託製造業者を選定するのも調達側の大きな負担となります。
このような時に存在感を発揮するのが製造ハブとしての機能を持つハブ企業という事になります。
製造ハブとは、顧客の窓口となり一括して製造案件を引き受ける機能です。
ハブ企業とは、受託製造業のいち形態で、製造ハブとして様々な製造工程を持つパートナー企業をネットワークし、それぞれの強みを統合してメーカーに提供する役割を担う企業です。
メーカーからすると、調達すべき案件を1社に丸ごと任せられるので、個別に調整や交渉をする手間を大きく省く事になります。
更に、多くの場合ハブ企業は、パートナー企業と密接な信頼関係を構築していますので、低コストで、リスクが少なく、品質の高い調達に繋がります。
特に多品種少量生産や、試作・開発の1点モノ、メンテナンス・保守部品の製造等では、ハブ企業の果たす役割は非常に大きなものとなります。
2. ハブ企業の役割
ハブ企業は、メーカー側の要望を取りまとめて、個別のパートナー企業へと展開していきます。
本来メーカーの調達担当者が、個別の受託製造業者相手に行っている調達活動を代行することになります。
一方で、受託する受託製造業者からすると、わざわざ自分たちで営業をしなくても、ハブ企業が自社の工程にマッチした仕事を依頼してくれることになります。
受託製造業者から見れば、営業活動を代行してくれるという事になります。
つまり、ハブ企業はメーカー側への調達代行と、受託製造業側への営業代行を担い、両者の結節点(製造ハブ)として振舞う事になるわけです。
ハブ企業の受注金額は、パートナー企業からの仕入金額に、管理費用(マージン)を加えた金額となります。
この管理費用が、ハブ企業の稼ぐ粗利であり、調達・営業代行の仕事の付加価値となります。
調達側からすれば、一見すると個別に発注するよりも、ハブ企業の管理費用が加わる分だけコストアップしているように見えるかもしれません。
実際にはむしろハブ企業を経由した方が、結果的にコストが安く済む場合の方が多いのです。
まず、調達代行をしているわけですから、本来メーカー側の調達担当者の調達工数が節約されます。
この分だけでも、多くの場合ハブ企業の管理費用以上のコストダウンとなっているはずです。
また、パートナー企業からすると本来は自社で営業活動をするわけですから、当然受注金額の中には営業担当者が行う営業活動の費用も含まれます。
ハブ企業を経由する事により、営業担当者の工数が減るわけですから、受注単価を低く抑える事ができるわけです。
ハブ企業はパートナー企業の得意技術を熟知しているため、ミスマッチを防ぎ最も合理的な製造手段を提供する事ができます。
ミスマッチな受託製造業に発注しようとして、図面がたらい回しになるような事態も防げます。
様々な製造工程を熟知しているハブ企業であれば、最も合理的な製造方法を提案してくれる頼もしいパートナーとなります。
3. 信頼コストとパートナーシップ
ハブ企業とパートナー企業は、既に取引実績を重ねていて、信頼コストがかからない場合が多いです。
メーカーからすれば、既に構築されているエコシステムをリスクや追加費用なしに利用する事になります。
特に多品種少量生産の場合は、この信頼コストがキーポイントになります。
信頼コストとは、顧客への信頼度合に応じて、受託製造業側が加える受託費用です。
取引実績が少なかったり、信頼頼関係が低いと、この信頼コストが大きく増大し、コストの大部分を占める場合もあります。
既に受託製造業側も顧客を選ぶ時代となっていますので、実績がなかったり、信頼できない顧客にはその分信頼コストを上乗せする事になるわけです。
少しの傷でも再製作指示をする、相見積もりを繰り返す、値引き要求を繰り返すなど、顧客本位の取引を続けているとこの信頼コストが増加していく事になります。
特に、初めて仕事を依頼する場合には、受託製造業側もそれなりのリスクを信頼コストに反映する事になります。
ハブ企業とパートナー企業は、日常的に取引を繰り返していますので、既に信頼コストがゼロに近い状態で取引が可能なわけです。
メーカー側としても、受託製造業各社と個別に信頼関係を構築するよりも、ハブ企業1社との信頼関係を深める方が効率が良いですね。
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株式会社小川製作所
取締役 小川真由
< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。
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